直木賞受賞作、佐藤正午「月の満ち欠け」を読む。
生まれてもいない時代の記憶を持つ少女・瑠璃。その記憶は受け継いだものであり、また次に受け継がれていく・・・。
という設定で時間軸が前後に動く(しょっちゅうではないけど)こともあるのか、すごく落ち着かない印象を受ける。なぜ・どうして、という部分にほとんど触れられることなく、淡々と物語が進んでいくから、余計にそう感じる。
強烈に怖いわけではないのだけれど、これはホラーだ。
月が満ち、そして欠ける、という時間の流れ。
そういう自然の流れと生死が混ざり合う得も言われぬ恐怖感。
物語の中盤で描かれる「最初の瑠璃」と「青年」のエピソード。読者としての僕が感じる、地面から足が離れていくような浮遊感は、まさしく瑠璃に引き込まれていく青年と同一のものだった。
彼女は言うのだ。「月のように死んで、生まれ変わる」と。
やはりホラーだ。しかも怖くても目がそらせないようなジャパニーズホラーの、あの独特の世界。きゃー。
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早く先を読みたくてか、斜め読みしてしまってて、「いやいやここは重要なとこだから」と2ページぐらい戻ってみたら、「ちゃんと読んでるじゃん」。
寝る前に少し読むと興奮しているわけでもないのに寝付けなくなってしまったり――すごく不思議な体験だった。
登場人物の誰かに思い入れを持ってたりしたわけでもないのに。
まちがいなく、その世界の中にいたんだと思う。
その意味では、数時間の現実逃避には超オススメであったりします。
月が満ちるまで7年。欠けてしまうまであと8年。きゃーーーー。
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