2017年2月6日月曜日

手紙で伝えられる物語。

キョンキョンのオススメ第17弾、井上ひさし「十二人の手紙」を読了。
手紙に記された文言――手紙でないものもあるけれど――をほぼ列挙すること“だけ”によって展開される12編(プロローグ+本編11)の物語。

手紙というのは、当然「書き手」が紡ぐ文章ではあるのだけれど、その文章の中には別の「登場人物」もあり、そしてもちろんそれを届けたい「読み手」もある。ちゃんと物語として成立できる要素はそろっている。

そして手紙という形態の文章は、ときに「ドラマチック」だ。
同じ事象を書くのにも、より誰かに伝えたいという思いが、“強い文章”になるように思う。それが、切迫感となって読者――それは手紙の受取人でもあり、読者である僕でもある――に伝わってくる。
最近手紙を書くようなことはものすごく少ないけれど、こうして日々ブログを書いていると自分自身の文章から同じような印象を受けることがある。それが普通の文章と手紙文の差だ――と解説にも書いてあった(^^;

気がついたら、その書き手の持つドラマの中に引きずり込まれている。

引きずり込んでおいて、そのエンディングで必ず「えええええぇぇぇっ!?」と唸らされることになる。そう、そのドラマとはミステリでもあった。

衝撃的。そのひと言に尽きる。

イッキ読みさせられた12の物語の後に、エピローグがある。

そこでもう一度唸らされる。「えええええぇぇぇっ!?」と。プロローグが分かれてたのはそういうことか。単なる短編集ではなかった。

しかもこれ、およそ40年前の作品。井上ひさし、恐るべし。

0 件のコメント: