表紙から想像されるのは、“ほんわか穏やか、酸いも甘いもたっぷりと経験してきたおばあちゃんが、近所の人たちのまわりで起こるちょっとした事件を難なく解決してしまう安楽椅子探偵もの”、って感じ。
というわけで、中山七里「静おばあちゃんにおまかせ」を読了。
冒頭1行目から『ざけんじゃねぇ。手前ェいったい~』だもの。しかも事件はけっこうハード(「警察官ピストル射殺事件」から物語が始まるし)。
安楽椅子探偵は安楽椅子探偵なんだけど、おばあちゃん、ぜんっぜん穏やかじゃない。歯に衣を着せないというか、むしろ好戦的(ちょっと違うか)。
そうだった。中山七里はそういうのが得意な作家だった。まさに「あのとき」のじいさんと同じだ。
物語の背景には現代社会が持つ歪み(現実の事件なども実名でもいくつか登場する)が明確に描かれる。
そして静おばあちゃんはその社会、そして“正義”に対して辛辣で苛烈で容赦ない。
ミステリーとしても相当におもしろいんだけど、おそらくはそれが書きたくてこのキャラクターを生み出し、この物語が生まれたのではないかと思う。
「正義は皆違う」と静おばあちゃんは言う。だから僕も静おばあちゃんが必ずしも正しいとは思わない。だけど、唸らされるものがあるのも確かで。
・・・エンターテインメント小説でこんなこと思うなんてね。
そしてさらに物語の終盤には意表を突く展開も待ち受け、さらにさらに「不可能犯罪」まで!そんでもって結末が斜め上すぎる!!
なんとコストパフォーマンスのいい一冊(表現おかしいぞ>俺)。
0 件のコメント:
コメントを投稿