ミステリーには “安楽椅子探偵” って言い方があります。現場に赴かずに事件を解決する、たいていは「出不精」というキャラ設定なわけですが、今回の場合はちょっと新鮮でした。リアルに要介護の老人、つまりは“車椅子探偵”なのですから。
あ、古い人には「鬼警部アイアンサイド」って言えばわかってもらえるかな?
と思ってたら本文にその話が出てきた。うれしいよね、著者のイメージに読者である僕のイメージが合致するのは。
中山七里「さよならドビュッシー 前奏曲」、作品解説にはエピソードゼロなんて書いてあるけれども、要は「さよならドビュッシー」の続刊で前日譚。前作を知らなくても単独でも十分楽しめるものでした。
お話は中編ミステリー集で、細かく語るわけにはいかないけれども、すごくおもしろかった。特にその要介護探偵の生き方に惚れてしまいそうで。
たまたま仕事で多くの障碍をお持ちの方々と接した直後だっただけに、「これも俺の一部だ」と言い切る生き方に、ちょっと感動してしまったんですよ。
車椅子だからといって特殊なことではなく明日は我が身。そのとき、僕はどう思えるのか。ミステリーとは何の関係もないところですけどね(笑)。
最後の「要介護探偵の挨拶」は、話そのものも、明らかになる真実も、そして結末もすごくせつなくて、ぐっと来た。
単体でも楽しめるとは書いたけど、これについては前作や映画を見た方にはぜひオススメしたいな、と。
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