「さ、そろったところで乾杯しようぜ、乾杯っ」
矢野の勢いに乗せられて3つのグラスが音を立てる。
最近どうしてる、なんてお決まりのセリフではなく、どうしても先に確認しておかなくては。
「なあ、矢野って甘木と知り合いだったっけ」
「あれ、このメンバーで飲んだことなかったっけ?」
いや、そんなことはなかったはずだ。小さく首を横に振った。甘木が口を開く。
「最初は2コ下の城崎の結婚式の二次会。表参道のさ、カフェみたいな店貸し切ってやったときだよ。もちろんお前もいたよ」
「そうそう原宿。あのとき俺、新婦側のおともだちってポジションでさ、会場でお前見つけてエェーッて」
結婚式?原宿?
覚えがない。確かに二次会なんてずいぶん出席したはずだし、そういう店に行ったような記憶は薄っすらとあるけど、何の集まりだったなんて覚えてないし、ましてや甘木と矢野がそこにいただって――?
「それでさー、なんかゲームみたいなのやったときに俺と甘木が同じチームになってー・・・」
矢野の声が遠くなっていくような気がした。
よく思い出せないけれど、甘木に「お前もいた」とはっきり言われてしまうと、そうなんだろうと思うしかない。これ以上聞くことも憚られるような、ましてや「覚えてない」なんて言うのが申し訳ないような。
「・・・そうか。そうだった、な」
小さな嘘をついた。このとき俺はどんな顔をしてたんだろう。
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