[002]
2023年元日。来客もあり慌ただしかった一日も、ようやく落ち着いた夜。
「あっちゃんちに電話した?」
「あ、まだだった」
固定電話の受話器を上げ、暗記している番号をプッシュする。
『おかけになった番号は、お客様のご都合によりおつなぎできません』
番号間違えたかな。
もう一度プッシュする。聞こえてきたのはやはり同じメッセージだった。
これだから酔っ払いは。酒を飲んでたわたしは、番号を間違えないように、スマホの電話帳からあっちゃんのスマホを呼び出す。
『おかけになった番号は、お客様のご都合によりおつなぎできません』
マサさんのスマホに掛けても同じだ。
「あれ?なんだかつながらないよ」。明日掛け直せばいいか、と正直この日はあまり深くは考えなかった。
そして翌日、改めて掛けてみるも状況は何も変わっていない。ようやく事態の深刻さに気づく。
聞こえてきたメッセージを調べてみると、おそらく原因は料金滞納による停止措置。そういえば夏に滞納で電気が止まったって話もあったなと思い出す。
ただ固定電話と携帯電話の両方というのも何か変な気がする。妻は暮れにあっちゃんと電話で話したと言うし。
ただ固定電話と携帯電話の両方というのも何か変な気がする。妻は暮れにあっちゃんと電話で話したと言うし。
いずれにしても本人たちに連絡をして、料金を払ってもらわないと。ただ電話がつながらないということはそのための「連絡の手段」がないということに他ならない。
老人のふたり暮らしだから、何日も電話がかかってこないことも普通だろうし、自分たちが電話をかけようとしても、気づかないケースもありそうだ。さてどうする。
わたしと妻の出した苦肉の策は、電報。
電報には、届けたことを発信者に通知してくれるサービスがある。これをオプションで追加すれば、少なくともこちらのメッセージが届いたことだけは確認ができる。
“電話が通じなくなっているみたいです。とにかく連絡をください”
翌日、電報の配達完了の通知も届いた。つまり最悪の事態ではないということは確認ができたということだ。
とりあえず向こうからの連絡を待とう。ほかにできることはこの段階ではないから。
とりあえず向こうからの連絡を待とう。ほかにできることはこの段階ではないから。
その夜、夏に電気代の滞納の話を教えてくれたあっちゃんの末妹のりつさん、それからマサさんの末弟のヤスおじさんからわたしに電話が入る。ふたりとも正月の挨拶のつもりで電話をしたら通じないから、入院でもしたんじゃないかという心配してるとのことだった。
「たぶん電話代の滞納みたいなんですけど、今連絡を取ってますのでご心配なく」
どう思われたかわからんけども、わたしからはそれ以上言いようがない。言えることもない。
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