2020年2月10日月曜日

やつらはアコギかリッパか。

裏表紙には「ユーモアミステリー」と書いてはあって、確かに軽快な語り口の中、謎が見事に解かれるところもあるんだけど、それはこの物語のある一面でしかなくて、むしろお仕事小説、それも政治家事務所の事務員のそれの側面が強いのかも。さらに言えば、それを下敷きにして「政治家たる人物とは」なんてことが強く伝わってきたり。
それが畠中恵「アコギなのかリッパなのか~佐倉聖の事件簿~」

畠中さんといえば時代小説の人、というイメージなのですが、初めて読んだのがこの現代小説だというひねくれ者で申し訳ない(^^;

セミリタイヤした元大物代議士の事務所で働く学生事務員の聖(せい)が主人公。
政治家たちから持ち込まれる謎や難題に、派遣される形で対処するのがお仕事。聖は機転も効くし行動力もあり、それから洞察力も優れるスーパー事務員だったりするので、あっと驚く結末に事件を収束させる――というのがメインストリーム。

この手際の良さがまずもって魅力なのだろうけど、政治家と事務員という設定がキモだよね。

政治家に対して世間様が思う「アコギ」というイメージ。善人の皮を被ったような印象。そういう側面とは真逆の、生活者の幸福のために日夜努力を続ける「リッパ」な姿。そういう描き方が実にお上手――実在の政治家に対して僕がどうこう思ってる、ということではなくてね。
その人間味が物語を楽しくさせてるのかな。そんなことを一番思ったわけです。

物語の終盤で、聖が非常に苦悩する場面があります。それが解決したとき、聖には労いの言葉がかけられます。それに対し、聖は『こういうときは優しいのだ』と思うのです。

良いとか悪いとか、ホントかウソか、アコギなのかリッパなのか、そういうことじゃなくて実に人間っぽいじゃないですか。

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お話とは直接関係がない、というかこれがダメだと物語が成立しないので文句があるわけじゃないんですが、「あそこは携帯電話が圏外になることが多いから連絡はメールで」と言われてノートPCを渡されるシーンがある・・・。
現在よりもデジタル環境は時代をさかのぼってるんですが、やっぱり携帯電話の電波ないとモバイルでメールは送れないよなぁ。あ、衛星電話(笑)。

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