心がお疲れ気味のときにほむほむの文章はいい。たぶん、僕自身がそこにいるから。
エッセイで笑いたいだけではなくて、心の芯の恥ずかしさみたいな他人に抉られると痛いところも自分で掘り返せばただいとおしい、そういうことなんじゃないかなと思ったりしてる。
穂村弘「もしもし、運命の人ですか。」を読了。歌人でもある著者による恋愛に特化したエッセイ集だ。ところどころに作あるいは撰の短歌も挿入されている。
本編にもあったが、10代・20代にとってみれば、50代・60代・70代の恋愛なんて『銀河系の外側の幻』なんだろうが、いざそっち側にたどり着いたら「それが何/別に」って話だろう。
黄昏流星群なんだからな!(←?)
巻末の解説に、この本に表れているほむほむの人物像として『小心者で、自分が他人にどう思われているかが気になって仕方がない(略)多少の生きづらさを感じている(略)しかしそんな自分が嫌いというわけではなく、むしろ強く激しい自己愛に振り回されている』と書かれている。略した部分にはちょっと強い表現もはさまってるけど、まさに僕じゃないか、と思うんだ。違う?
ただ『それを打ち明ける演出によって女性を虜にする』については、僕とはまったく違うのがくやしい(笑)。
いやね、読者側の女性が「そこが可愛い」と思うのはわかるようなわからないような、ではあるんだけど、同性目線でいうと「いや、そんなこと暴露してしまって大丈夫なのか」と心配にすらなる。確かにそういう「ヘン」な部分ってのは方向性や分量の大小の差こそあれ、大筋では「うんうん」とうなずくところ。ただそれは公にしちゃったらアブナイところだと思うんだよね。僕が心配するようなことじゃないけどさ(^^;
くだらないダジャレもあえて書き記してそのままスルーしていくというのは相当胆力がないとできない芸当。すばらしい。
そうそう。恋愛の話。
すごく印象に残ったのは「恋にかかる瞬間」という項。恋に落ちる“瞬間”の話。
「そのときにどうなるか」というアンケート結果の羅列がなかなかバラエティに富んでて楽しいんだけど、僕が一番好きだったのは「遠近感が狂いはじめる」というやつ。なんかニヤリなのです。
こうした初期症状は、「かかった瞬間」の後に出る――。症状が現れたときにはもう風邪は引いてしまっている。手遅れ。何らかの結末まで進むしかない。そういうことだと。
若いほうが症状が一気に強く出る。歳をとるとなまじ免疫があるために曖昧に始まってぐずぐずと続く。歳をとってると場合によっては重症化する(笑)。
つまり、原因はやはり未知のウイルス。
・・・風邪の特効薬はない。恋患い、お医者様でも草津の湯でもってことか。なるほどとしか言いようがないわ。
しかも「遠近感が狂いはじめる」なんて書くことでニヤニヤしてしまうのは、文字を通じた二次感染である、とほむほむは言うのだ。・・・まいりました。
てなエッセイが盛りだーくさん。
僕はふだん本を読みながら気に入ったフレーズをメモしたりしてるんだけど、この本の場合はメモだらけになっちゃって収拾がつかなくなってしまった(^^;
いくつかかいつまんで並べちゃうけど、自分でも意味不明なんで申し訳ない。
- 上昇角度を抑えることで「ときめき」の時間を引き延ばす。そのためにデータの開示量やコミュニケーションレベルを限定する。
- 愛情確認の行為=いちゃいちゃ、愛情確認の衝動=さかのぼり嫉妬
- 恋愛の純粋さ、難しさ、残酷さ、面白さ
- 「選択と行動の自由」と「理想の高さ」が限りなく「わがまま」に近づいていく
・・
・・・
あしたは2月14日、バレンタインデー。もしもし、あなたは運命の人ですか。
本書を読むときのオススメBGMは『運命なんて知らないけどこの際存在を認めざるを得ない』という印象的なフレーズで始まる宇多田ヒカルの「誓い」。
オンライン確認できればもう十分でタップはせずに画面そっ閉じ
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