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今年も夏がやってきた。
あっちゃんの入居している老人ホーム、グッドライブ中央公園から電話が入る。
『お母様の化粧品なんですが、ご希望のものを買ってもよろしいでしょうか』
前も同じような話があったような気もするが、担当の方が代わったりすることもあるだろうし、都度確認してもらうのは悪いことではない。
「はい、費用はかまいませんので、本人の希望のものを手配いただけると助かります」
『わかりました。あと、下着の枚数が少し足りてないのでご用意いただいてお送りいただくことは・・・』
「それこそこちらでは何がいいかわかりませんので、買っていただけますか」
『あ、そうですよね』
最近の様子を聞いてみると、体調はほぼ問題がなく、低血圧で意識を失ったことのある入浴の前後には特に意識して水分を取ってもらうようにしているという。
施設内での体操にも積極的に参加しているし、職員や他の入居者と笑顔で話している場面も多いそうだ。
入居からおよそ2年、しっかり馴染んできたのかな。
そのあっちゃん、わたしの妻に電話を掛けてきて『マンションどうするか聞いてる?』と質問してきたそうだ。ここ1年ぐらいはその話は出てなかったと思うが、急に何かの回路が接続されたのだろうか。
続けて出たという『マンションに戻りたいんだけど、ここにいれば何でもしてくれるしね』という言葉も、老人ホームでの生活に馴染んだ証だといいのだけれど。
そして7月15日。
マサさんの一周忌である。
といっても墓参りをする墓もまだ用意していないわけで、何をするでもないのだが、あれから1年という区切りの気持ちもわたしの中にはある。
できることといえばあっちゃんに電話することぐらいか。
「もしもし。久しぶり。元気にしてますか」
『そうね、することもないから毎日マサさんの顔を見ながらテレビ見てるわ』
遺影はテレビの横に飾ってある。
マサさんの話が出たが、一周忌なんてことはもちろん覚えていない。あっちゃんが一番認識できていないのは日付だから。
あえてこちらから「もう1年経ったね」なんて言う必要もないか。
「そのうち顔見に行くからさ」
『あらそうしてもらえるとありがたいわ』
「じゃあ、また。元気でね」
声自体はとっても元気そうだった。ひと安心だ。
今年の夏は穏やかに過ぎていきそうだな。このときはそう思っていた。
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