駅伝シーズンも終わりか。そんなタイミングで駅伝を描いた瀬尾まいこ「あと少し、もう少し」を読んだ。
帯に「傑作―三浦しをん」ってあったのが購入の最大の要因で(笑)、そして予想どおり、競技を描くことよりも青春小説の側面のほうが強い一冊だった。舞台は田舎の小さな中学校。県大会出場を目指し、学校の大きな行事のひとつでもある地区の駅伝大会の3km×6区間に挑む陸上部の物語。
本文は6つの章で成り立っている。それぞれが1区から6区に割り当てられ、そこを走る選手それぞれの目線で語られていく。
レース中は当然ひとりひとりの話だが、練習・準備期間はある意味「同じ場面」が描かれる。が、各章を読み比べると、それぞれが少しずつ違って物事をとらえているということがわかる。
あたりまえと言えばあたりまえで、同じ事象から同じ感情が生まれるとは限らない。そもそも陸上部員は3人で、残りの3人は寄せ集め。単純に同じ方向を向くなんてできるわけがない。
ところが、じゃあすれ違ってしまうのか、というとそういうことでもない。
受け取る側の想い。
渡す側の想い。
たとえ想いがひとつになってなくても、完全に勘違いの思い込みでも、つながれる襷によって全体はつながっていく。「あと少し、もう少し」・・・。
127ページってまだ序盤じゃないか(笑)。やばい。127ページから128ページになるとこで涙でた。 #読書
— 144factory (@144factory) 2017年1月13日
これぞ駅伝の魔力なのか――実に好み(笑)。
三浦しをんは解説でこう言っていた。『私はそこに希望を見た』と。
いやー、素敵な一冊でした。坊主2号に読ませようっと。
* * *
ところでこのチーム、メンバー個々の個性が実にはっきりしてて、読んでるとだんだん顔が浮かんでくるような気分になる。と同時に、なんだか“みんなの力を合わせて戦うスーパー戦隊”な気もしてきて(^^;
というわけで登場人物を紹介してみよう。何の企画だ(笑)。
監督:
新たに顧問に就任した運動音痴の美術教師・上原。周囲を柔らかく包み込むような「言葉」が実にいい。芸術畑ならでは。女性だし、さしずめ「ピンク」か。
1区:
陸上部・設楽。おとなしいけれど実はしっかり周囲が見えてて、ここぞの場面で強さを見せる「グリーン」かな。
2区:
問題児・太田。典型的な「不良ぶってるくせに根はいいやつ」。熱いものも持ち合わせる「ブラック」。
3区:
バスケ部のジロー。頼まれるとイヤとは言えない男で、ちょっとお調子者のムードメーカー。もちろん「イエロー」だ。
4区:
吹奏楽部の渡部。クールな立ち振る舞いをしているが、それは自分の中の苦しみを覆い隠すための鎧。ときにチームと対立する「ブルー」。
5区:
陸上部・俊介、唯一の2年生。陸上に対しても、先輩に対しても、常にまっすぐ向き合うその姿、ピュアな「ホワイト」ってとこか。
6区:
アンカーは部長の籾井。自分がどんなに苦しくても、優先すべきは
ほら、戦隊ヒーローって途中から仲間が増えたりするじゃない。そんなところも似てるかな、と。
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