[065]
老人ホームへの入居準備と並行して、マンション売却の話も進めなければならない。
最終の見積のために不動産業者が確認のためにマンションに来てくれることになっていたのだが、それに対して間に入ってくれているSS社イワキさんに「例によって母がそのことを失念している可能性が高いので、よろしくご対応をお願いします」とメールを一本入れておいた。
イワキさんのことは施設見学で2日間一緒にいたし、名前を出しても「?」というリアクションがないので、おそらく覚えているだろうし。
そのほか、売却に向けて必要なもののリストも送ってもらった。
実印。
マサさんの実印は手元にある。マサさんの部屋から見つけて回収済みだ。
印鑑証明と住民票。
マサさんのマイナンバーカードはわたしが持っているので、コンビニで発行しておいた。
当然のことながら、マサさんの住民票を出すとそこにはあっちゃんの名前も記載されている。
登記済み権利書。
これが最大の問題だ。もう一度マサさんの部屋を本格的に探さなくてはならない。
ただ、仮に見つからなかった場合も、マサさんとの面会が必要になるものの行政書士が対応可能という話も教えてもらった。少し気が楽になった。
固定資産税納税通知書。
これも前回リビングテーブルの上の郵便物の中から回収して、わたしの手元にある。
銀行口座。
売却代金の振込用。これはマサさん名義のN銀行の口座が都合が良さそうだ。老人ホームの利用料の引落し口座もこれになる予定だから。
準備のできたものはひとまとめにしておこう。
わたしは100円ショップでチャック付きのポーチやら何やら、整理用の諸々を買い込んだ。
そしてホームとあっちゃんの面談日当日である。
わたしのスマホが震えた。相談員のミズマキさんからの着信だ。
『お母様、今日は来訪の件、ちゃんと覚えていらっしゃいました』
「良かったです」
『無事面談も終わりましたので、入居日程を決めていきたいと思います。早ければ20日の週、受け入れの都合もありますので、お父様とお母様の入居日は別になるかと思います』
そうか、入居できることになったのか。良かった。本当に良かった。
ん、20日の週だって?もう来週じゃないか。
もちろん平日日中は仕事をしているわけで、すっかり余裕のない日々をわたしは送っている。何かこう、時間の急流に飲み込まれているような感じさえある。
いずれにしてもさすがに来週の、しかも前半は難しいんじゃないだろうか。
あっちゃんの入居準備の際には、妻も同行してくれるということになっている。そうしたことも含めて。
「こちらの希望で恐縮ですが、あまり長期の休暇がとれるわけではないこともあり、20日の週であれば可能な限り週の後半、できれば週末のほうがありがたいです」
念のためSS社イワキさんにも同じ内容でメールを入れて、調整を依頼した。
ともあれ入居が決まったことは喜ばしい。が、漫然と喜んでいる時間はない。必要なことを、漏れなく。
まずは早速入居費用のイニシャル分の振込手続きをしなくては。
064<[翳りゆくひと]>066
0 件のコメント:
コメントを投稿