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マサさんの通夜当日の朝。準備そのものは葬儀社に任せてあるので問題はないが、いろいろやっておかないとならないことも当然のようにある。
午前中、まずはあっちゃんの暮らすグッドライフまで出向き、相談員のマツイさんと今後についていろいろと打ち合わせをさせてもらった。
「お父様の件、お悔み申し上げます」
「看取り介護の件を準備いただいていたところでこんなことになってしまって」
「そうですね、病院との打ち合わせは明日の予定でしたから」
「いろいろとごていねいにご対応いただいたこと、改めてありがとうございました」
まずはこの2日間のあっちゃんの外出の話。何時に出発するのか、戻るのは何時になるのか。夜になった場合の入館方法は。施設の食事を食べないのは今日の夜と明日の昼とおやつでいいのか。
細かいけれども重要な確認事項だ。
次はさらに現実的なマサさんの部屋の処遇。
「本来ならばお荷物をご家族にひとつひとつ確認をいただくべきなのですが」
「持ち込んだ荷物はごく少ないですし、正直わたし自身にその確認の時間が取れないと思います。基本的にすべて処分する、という形でお願いしてよろしいでしょうか」
「わかりました。追加で購入した椅子などもありますので、お母様のお部屋で使えるようなものがあれば適宜移したいと思います」
マサさんの入居時に支払った費用の中に、利用費の前払い分が含まれていて、入居期間が短かったこともあって精算されて保証人であるわたしに返却されるそうだ。
確かに前払いをしていたような記憶もあるが、あまりよくわかっていないまま支払っていたなと思う。
また、月々の利用費はマサさん名義の口座から2人分が引き落とされていたので、それをあっちゃん名義の口座からの引き落としに変更することも確認した。
諸々手続きの書類に押印や返却なども必要になるので、それは葬儀の翌日に手続きをするということでアポを入れさせてもらった。
マツイさんと、あれはどうする、これはどうすると、懸案を洗い出し方針を決めていく。
「まだ何かがあれば追って確認することにしましょう。」
「そうさせてください。えっと今はまだ面会時間ではないですよね。母には顔を見せずに失礼します。後ほど予定の時刻に母を迎えに参ります」
「お待ちしています。そうだ、お通夜に施設のほうからお花をと思っていますが」
「家族だけでこじんまりと行う予定にしておりますので、お気持ちだけで。ありがとうございます」
グッドライフを出たわたしは、家族を出迎えるために空港に向かった。
その電車の中でスマホが震えた。あっちゃんからの着信だ。最寄りの駅でいったん下車し、折り返した。
「もしもし、今電話くれた?」
『あのね、今からマンションに戻って喪服を取ってこようかと思うんだけど』
「マンションには戻れないよ。今日着るものはみぃさんが用意してくれるから大丈夫だよ」
『そうなの?』
「うん、心配しなくていいよ。3時半ぐらいには迎えに行くから、そこで待っててね」
『待ってればいいのね』
物分かりがよくて助かった。
そして、今日、マサさんの通夜があるということを忘れてはいなかったことに少しほっとした。
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