2025年10月10日金曜日

翳りゆくひと。[118]


[118]

夜遅く、わたしの自宅の固定電話にあっちゃんから電話がある。妻が応対してくれたのだが、『財布にお金がない』と言っていたそうだ。折り返させると言って切ったという。
その話を聞いたわたしは、その日あえて電話はしなかった。

約1年間、必要なものはスタッフにお願いすれば買ってもらえるということは理解しているはずだし、実際にそうやって好きな飲み物なんかを買っている。
おそらくは何かのスイッチが入ってしまって混乱し、そして電話してきたんだろうと思う。電話を折り返してそのことについて話せば、また違う記憶が植え付けられてしまうかもしれないし、何よりもひと晩明ければそのこと自体を忘れてしまうだろうという期待もあった。

案の定、その話はそれきりだった。
だが、お金の話はトラブルの元になるとも聞く。これ以上出てこないことを祈るばかりだ。

そのあっちゃんのマイナンバーカードについて、電子証明書の更新の案内が届く。
更新をしないという選択肢もないではないのだが、マサさんの確定申告の際に電子証明書用パスワードで苦労したということもあるし、やはり更新しておくに越したことはない。

案内を読むと、代理人でも手続きは簡単そうだし、現在の電子証明書用パスワードの情報はあっちゃん自らのメモが存在しているから、そこも問題なさそうだ。
わたしはグッドライフのスタッフの方と相談し、役所まで更新手続きに行っていただくようお願いし、必要書類を郵送した。

時を同じくしてわたし自身の電子証明書も更新したのだが、手続きにかかったのはほんの10分ほど。実に簡単だった。

ところが実際に更新手続きに行ったスタッフさんからの連絡によると、『証明書用パスワード、メモに書かれていたのと違うみたいで更新ができませんでした』と。

あのあっちゃん自筆のメモはいったい何だったのか。

結局パスワードのリセットと更新で2回、そして電子証明書の更新にさらに1回、スタッフさんに役所まで行っていただくことになってしまった。
恐縮至極とはこのことだ。

結果として4桁の暗証番号も、長いほうのパスワードも、ちゃんと把握ができた。良かったというほかはない。

「お忙しいのに、何度も何度も足を運んでいただいて、本当にありがとうございました」

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