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『お悔み申し上げます』
その言葉から始まったSS社のウチコシ社長のメールには、『相続される財産の一覧をお送りいただけますか』とあった。
それならもちろんすぐにでも提出できる。
マサさんのすべての資産を確認してデータ化し、日々更新してきたことがここで役立った。
ウチコシ社長からすぐに折り返しの電話が入る。
『確認いたしました。この内容であれば相続税の控除対象だと思いますので、特に税理士などを入れる必要はないと思います』
要するに、大した財産はないよ、という意味だと思う。
まあ生前マサさんも「遺すものはない」と言い切ってたから。
「わかりました。それで何から手を付ければいいでしょうか」
『まずは遺産分割協議書を作成してください。ネット上にひな型などがありますのでそちらをご参照いただいて』
仮にAIを使ったにしても同じ回答があったのかもしれない。でもAIが出した回答はその正確性を検証する必要がある。自分都合ではあるが、信頼のおける人を頼ることで手間が減ったと考えるのが妥当だろう。
『ただ1点、ゴルフ会員権のところに「5株」という記載があります。これがもし正会員5口の会員権を保持しているということであれば、とても大きな資産になりますので、そうなると税理士を頼んだほうがいいことになります。まずはご確認いただいたほうがいいかと思います』
「ゴルフ場に確認してみます。念のためですが、もうこの時点でゴルフ場には父が死亡したことは説明してしまっていいですよね」
『はい、問題ないです』
「ありがとうございます。進めてみます。またご相談させていただくことがあるかもしれません。その折にはよろしくお願いいたします」
まずはゴルフ場か。何度か電話連絡をしていた番号を呼び出す。
「メンバーだった父なのですが、先日死去いたしまして」
『ご連絡ありがとうございます。心よりお悔み申し上げます。たいへん残念ですが、長年ご利用いただき感謝申し上げます』
「それで確認させていただきたい点がありまして、現在再発行の手続きをお願いしている会員権に5株という表記があるのですが、これは会員が5口という意味合いでは」
『いえ、当倶楽部は5株で正会員1口という扱いになっております』
それは助かった。そうではないかと思ってはいたが。
「それで会員証を再発行していただいた後、名義変更などはせず、相続の上売却したいと考えております。その手続きについて教えていただけますか」
『会員権の売買業者にご相談いただければと思います』
「いわゆる何々ゴルフといった名前の業者ですね。会員権が再発行された時点でコンタクトしてみたいと思います」
なんとなく以前聞いていた話とは違うような気もするが、気にすることはないだろう。
懸案だったゴルフ会員権の口数の問題がクリアになったので、これで遺産分割協議書が作成できる。
ネット上には何種類もひな型が確認できたが、その中でも最もシンプルなものを選んで準備を始めた。
暦はすでに8月に入っていた。もう半月も経つのか。早いな。
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