2025年9月26日金曜日

翳りゆくひと。[116]


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4月下旬、電力会社から郵便が届く。マサさんが所有している土地に立っている電柱について、土地の使用料が発生しているがお変わりございませんか、という確認の書面だ。
実は前年の照会の際に、マサさんが介護施設に入ったので連絡等は息子であるわたしに送ってほしいと書面で依頼をしていたのだが、それを受けて今回はわたし宛に送られてきたものだ。細かい点だがこうしたことに融通を効かせてくれるというのはありがたいし、本当に助かる。

とはいうものの、わたし自身は実際にどこに電柱が立っているのかはまったくわからない。住所としては今年売却した土地と同じであるが、住所が同じで地番の違う土地もある。照会の書類上には地番が書かれていないので、正直にわからないのだと連絡することにした。

「実はこの住所の土地についてですが、地番abcは現在も所有しているのですが、地番xyzのものは今年売却をいたしました。電柱がどちらの土地に立っているかは不明なので、申し訳ないですがご確認をいただければと思います」

これに対し、電力会社では現地調査を実施してくれて、約2ヶ月後に電話連絡があった。

『確認いたしました。現在もご所有の土地に電柱は立っております』
「ありがとうございました。引き続きお世話になります」

大きな金額ではもちろんないが、今後も使用料をありがたくいただけることになった。

また売却したほうの土地には「森林保険」なるものが掛けられていたのだが、念のため売却したので契約を継続しないと保険の引受会社に電話したところ、特に手続き不要ということで確認がとれた。
まあ保険期間満了なんで当然だとは思うが、こういうのもいちいちチェックしておかないと気持ちが悪い。

そして5月下旬、マサさんの4月分の入院費の請求書が届く。
当初個室に入っていたマサさんだったが、そこから2人部屋に移ったので、差額ベッド代が大幅に下がった。これなら老人ホームとの二重の支払いも大きな負担差にはならない。

この入院費を銀行で振り込んだところで、ふと気づく。もうグッドライフに入居して1年になるのか、と。
入居までのあれこれ、あっちゃんの施設に対する拒否反応、マサさんの入院などいろいろあったが、早いものだ。

もちろんマサさんが退院できたわけではないので「落ち着きました」と言えるような状況ではないのは間違いないのだが、それでも家族のひとりとしてわたしの心の中はかなり穏やかになったと言っていい。

そういえば旧住所のマンションからの郵便物の転送期間も終わりを迎える。
証券会社など住所変更をあえてしなかったところもあることはあるが、それでも1年間諸々の対応をしてきたから、もう転送は不要だろう。
延長を依頼することも考えたが、今回延長するとずるずると永遠に続けることになるような気もする。だから思い切って延長はしない。そう決めた。

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