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さてそろそろアポの時間だ。雨は小康状態。わたしはグッドライフ中央公園に向かって歩いていた。まもなく到着というとき、そのグッドライフからの着信がある。
『実はお母様のいらっしゃるフロアで、今日コロナの陽性者が出てしまいまして、フロアが閉鎖になってしまいました』
「そうですか。ただ今日はイトウさんとの打ち合わせもありますので、予定どおりお伺いします。もうまもなく到着しますので」
出鼻をくじかれたような感じだが、まあ打ち合わせが目的なので問題はない。
施設管理者のイトウさんとは、改めてマサさんの部屋の扱いについて確認した。
未払いの7月分の利用費は、デポジットで納めていた費用から相殺してもらい、残金が出た場合は保証人であるわたしに戻されることになる。
またこれに伴って、今後のあっちゃんの利用費の支払いをあっちゃん名義の口座からの引き落としに変更すべく、書類に記入をした。
「銀行印、本人がこれだというので一応押しますけれど、実は他の金融機関で別のはんこだったということがありまして」
「その場合は改めて銀行に提出する書類を用意してお送りしますので再度押印してください」
「すいません、お手間を取らせることになります」
あっちゃんの記憶だからなぁ。書類の作り直しの可能性は高いような気がする。
「それでこちらがご返却する書類ですね」
予定どおり、後期高齢者医療保険証、介護保険証、介護保険負担割合証、障害者手帳、加えてペースメーカー手帳も。
こちらからは年金事務所でもらってきた書類の中の「生計同一関係に関する申立書」への署名をお願いした。老人ホーム内での居室が別になっていたために別世帯扱いになってしまっていることで必要になった書類だ。
「実は先ほど区役所に行ってきて、火葬証明書が必要だと言われまして」
そう言ったところではたと気づく。書類の入った骨箱が置かれているあっちゃんの部屋はフロア隔離じゃないか。
「わかりました。職員をリレーさせるようにしてその書類を取ってくるようにします。ちょっとお待ちくださいね」
「すいませんご無理を申し上げて」
10分ほど待っただろうか、イトウさんが戻ってきた。
「お待たせしました、こちらですね」
「お手間を取らせました。それではこれから区役所に行きますので失礼いたします」
「実はお母様なんですが、どうしても息子様と会いたいということで、スタッフと協議しまして、抗原検査をした後に1階フロアまで降りてもらうことにしました」
「わかりました、待ってます」
そうまで言われて断るわけにもいかない。
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