少し前の週末のこと。
朝起きると誰もいない。僕を残して近所の友達の家に遊びに行ってしまったらしい。そんな意味のメモが残されていた。つまり、夕方まで暇なのだ。
テレビを見るでもなく眺めながら、何をしようかと考える。
そうだ、そろそろ春モノの洋服が並んでるころだな。ウィンドウショッピングと行きますか。ひとりじゃないとなかなかゆっくりは見れないし。
そういえば、この間見たあの店のシャツ、やっぱり試着してみよう。
車のエンジンをかけ、南へ針路をとる。
が、渋滞発生。明らかにショッピングモールの駐車場方向が詰まってる。これはきっと駐車場自体も満車に違いない。距離はまだ1キロ近くもある。中止だな。
ウインカーを出し、車線を変え、路地を通って渋滞を回避。やがて第一京浜国道に出る。
南方向に曲がってみたものの、完全に目的地がなくなってしまった。
どうしよっかな。あっちのショッピングセンターなら、多少はすいてるかな?
車の流れになんとなく乗りながらふと時計に目をやると、「13:05」の表示。そうか、まずは昼飯だ。
車は徐々に横浜に近づいている。
介一家が反対車線に見える。よし、ラーメンにしよう。でも、そもそもラーメン食べるつもりで家を出てないから、下調べもしてない。もちろん運転中だからケータイ使って検索もできない。そのへんで家系があったら適当に入るか?
いや、せっかくの単独行、適当に入って「残念」だったら、とんでもなく後悔する。
左手に高層ビルが見える。もう横浜駅。左の先はみなとみらい・・・。
刹那、閃いた。あ、あそこ!あの店に行こう!
横浜駅東口をかすめ、高島からR16に入る。桜木町、関内、曙町。ひたすら「横須賀」の文字を追う。吉野町の交差点は、左折するのがメインルート。曲がって少ししたところにコインパーキングを発見。空車を確認して、車を入れた。
あ、も少し先にもパーキングがあった。
目的の信号機はもう2つ先。まあいい。最初の信号が変わったので反対側に渡り、運河の手前の信号のところの路地を右に入る。見えた。
今日の新たな目的地、「ぺーぱん」。
旭川の名店「天金」の味を汲む店だ。ネット上にグルメ情報がむやみに氾濫していない時代から、「ここはウマイ」と評判だった。
この店に来るのはいつ以来だろう。何度か立て続けに通ったのは、僕が「旭川ラーメン」にどっぷりだったころだから、約10年前。だって、あのころ、ラーメン食べるために旭川、行ったんだもんな。
そんなことを思いつつ、少しガタつくサッシの扉を開ける。そこにはまるで時間が止まっていたかのような、おかみさんの顔。
味もさることながら、このおかみさんの笑顔と、絶妙でリズミカルな湯切り。そんなこともこの店の名物。
ちょっと無愛想だけど、話好きのおやじさんも変わってないな。
この店にしてよかった。
注文は、いつものように「醤油野菜」。
普通、夫婦でラーメン屋をやるなら、主人が麺をゆで、奥さんが具を乗せ、というのがイメージ。でもこの店は逆なんだよな。旦那が具となる「野菜炒め」を用意し、丼を客に供し、会計をする。そしておかみさんは麺ゆでと名人芸の湯切りに集中。
この風景こそが「ぺーぱん」。店の作りはひなびた町はずれの中華屋さん。でもそこで供されるのは、雰囲気をはるかに上回る一品。
そうそう、これこれ。立ち上る湯気とともに、スープを飲む。
イマドキの繊細・濃厚・複雑、そんなタイプではもちろんない。でもね、「醤油」ってこんな味なんだよ。思わず目を閉じる。うまく表現できない。うまいんだから、考えなくていいか。
この店にしてよかった。
国道16号吉野町よりやや南、睦橋交差点から西方向の路地に入って50mほど。スケッチブック持ってなかったので、ケータイ写真。
え、当初の目的のシャツ?帰りに別の店で買った。かなり気に入ってるよ。通販だと柄とかのニュアンスがよくわかんないから、実店舗で買って正解だな、と納得。
気持ちのいい1日。
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