2025年6月16日月曜日

もしかして、ひょっとして。

大崎梢「もしかして ひょっとして」を読了。
いわゆる「日常の謎」っぽい話が6話収録された短編集。


「小暑」

いきなりネタバレしちゃうと、「表紙のイラストにヒントあったのに〜ww」である。すっかり騙された(笑)。騙されたので読み直す。そうするとぜんぜん違う印象になる。
ああこれこそが「日常の謎」か。何も起こってないし、もちろん登場人物も何も困っていない。
でも読者である自分が、「やられた」と思うのはまさにミステリーだし、それが自分にも起こり得そうなことなのだもの。
おまけにね、「いい話」なんだよ。少なくとも僕にとっては。参りました。

あとね、個人的に書き出しの一文が!である。一気に持っていかれちゃう。
『東海道線の下り電車は、藤沢を過ぎるあたりからぐっと乗客の数が減る』

「体育館フォーメーション」

舞台は高校の部活動。探偵役はなぜか生徒会。
見事すぎる謎解きと、解かなくてもいい謎(犯人探し)は残したままで。
ああそうか、青春だものな。好きこれ。

「かもしれない」

誰かのことを考える。想像する。
決してわかるはずもない。
でも。
想像することは慮ることの一歩目。謎解きの第一歩。
いかん涙腺が。

「山分けの夜」

急に「日常の謎」とは思えない話が出てきてびっくりする。
でも漂うのは「ちょっとした疑問」というレベルの違和感。なんそれ。
と思ってたらいきなりの展開。腰抜けるような衝撃。
でも真実は・・・というところの種明かしの「分量」が絶妙で、他の話とのバランスが壊れるようなこともなく。唸る。

・・
・・・

細かくは書かなかったけど、「都忘れの理由」「灰色のエルミー」も同じように日常から非日常になってしまうギリギリのラインを突かれて、吸引力抜群の物語だった。
個々の作品から漂う雰囲気はまるで違うけど、やはりひとつの作品集としての共有部分は持っている、そんな感じの一冊だった。堪能。

・・・あと、巻末の似鳥鶏の解説がおもろい(^^


0 件のコメント:

コメントを投稿